コラム|道開きの香縁

七五三の意味と起源(その1)

2023年11月9日 行事

七五三とは?(その1)

「七五三」は、その名の通り、7歳・5歳・3歳になった子供の成長をお祝いする行事です。現代では、着物を着て神社に参拝に行ったり、写真館に行って写真を撮ったり、各家庭でお祝いをしますが、本来はそうではなく、七五三というのは、子供の成長に欠かせない人生儀礼、つまり「儀式」でした。昔の日本は食糧事情も悪く、生まれた子供がちゃんと成長することは簡単なことではありませんでした。3歳・5歳・7歳それぞれの年齢まで無事に成長できたことを神様に感謝し、年齢に見合った魂になるための儀式、これが 「七五三」なのです。

子供のお祝いと言えば・・・

・氏神様に無事に生まれたことを感謝する  「初宮参り」

・子供用のお箸やお茶碗を準備し、初めてごはんを食べさせてもらう「お食い初め」

・生まれて最初に迎える季節の行事である  「初節句」

その初節句の次のお祝いの行事が、「七五三」ということになります。

なぜ七五三をお祝いするの?

七五三には、子供が無事にその年齢を迎えたことに感謝し、これからのさらなる成長を祈る親の思いが込められています。七五三の起源となる平安時代には、子供が健康に成長するということはとても幸運なことで、「7歳までは神の子」と言われていました。この時代、小さな子供は亡くなることが非常に多く、言葉を理解し始める3歳頃から乳歯の生え変わりがある7歳頃までは、成長に伴い特に病気になりやすい年齢であった為、この時期に子供の成長を祈祷することがとても大事とされていました。その名残として、医療が発達した現代でも、七五三の儀式があります。いつの時代も子供の健やかな成長を願う親の気持ちは変わりなく、七五三という行事に形を変えて、ずっと受け継がれてきました。昔を生きていた人々の思いが詰まった七五三。いつまでも大切にしていきたい行事ですね。

七五三は3つの儀式に由来する

七五三は「髪置(かみおき)」「袴着(はかまぎ)」「帯解(おびとき)」という3つの儀式に由来します。

髪置きの儀(かみおきのぎ)・・・3歳の男の子・女の子

髪置きの儀では、子供の頭に糸で作った綿白髪(わたしらが)を乗せて長寿を祈願しました。綿白髪には、髪が白くなるまで長生きしてほしいという親の願いが込められています。古くは平安時代、武家では男女共に子供がそれまで短く剃っていて不揃いだった髪を、初めて伸ばし始める3歳頃に行われていた儀式です。男の子は髪を結う為、女の子は髪を伸ばす為に整えるという意味がありました。髪を伸ばし始めることは、3歳まで無事に成長できた印ということです。又、乳児の頃に髪を剃ることで、やがて健やかな髪が生えてくると信じられていました。

袴着の儀(はかまぎのぎ)・・・5歳の男の子

平安時代には、5~7歳の頃に当時の正装である袴を初めて身に着ける 「袴着の儀」を執り行いました。別名「着袴の儀(ちゃっこのぎ)」とも言われるこの儀式を経て、男の子は少年の仲間入りをし、羽織袴を身に着けました。当初は、男女共に行っていた儀式でしたが、江戸時代に男の子のみの儀式に変わりました。儀式は、まず天下取りの意味を持つ碁盤(ごばん)の上に立って吉方(きっぽう)に向き、縁起が良いとされる左足から袴を履きます。また、冠を被って四方の神を拝んだとも言われており、四方の敵に勝つという願いが込められています。

※現代の皇室でも、男児の儀式として数えで7歳の時に「着袴(ちゃっこ)の儀」、その後に碁盤の上から飛び降りる「深曾木(ふかそぎ)の儀」が続けられています。この「深曾木(ふかそぎ)の儀」を七五三の時期に開催している神社も全国各地にあります。

帯解の儀(おびときのぎ)・・・7歳の女の子

7歳未満の女の子は帯ではなく、胴の部分に紐を縫い付けて結ぶタイプの着物を着ていました。しかし、数えで7歳になると「帯解の儀(おびときのぎ)」 で、本仕立ての着物に丸帯という大人と同じ着物を着ることで、大人への仲間入りとし、子供の成長を祝う日とされています。儀式の始まりは古く鎌倉時代からで、もともとは男女共に9歳の時に行われていました。しかし、江戸時代からは、男の子は5歳の時に袴着を、女の子は7歳の時に帯解きを 行うという形が定着していきました。

※平安時代から行われていた儀式が、江戸時代になると武家や裕福な商人たちの間で行われるようになり、やがて明治時代には、3つの儀式をまとめて 「七五三」と呼ぶようになりました。そして時代を経て、だんだんと庶民にもこのお祝い事が広まり、現代の七五三の形を作っています。また、七五三は全国で盛んに行われていますが、元来は関東圏で行われたのが始まりで、やがて京都、大阪でも行われるようになり、だんだんと全国へ広まっていきました。

最後に

七五三の意味や起源(その1)をお伝えしましたが、いかがでしたか? 可愛い子供の晴れ着姿は、親にとっても嬉しいものです。七五三の意味や起源を知ると、きちんとお祝いしなければ・・・という気持ちにもなりますが、子供の体力や体調を最優先し、素敵な七五三の思い出を作りましょう。